エクシレル®SE
幅広い害虫の食害を速やかに停止。
長期間の害虫密度抑制で、作物をしっかり守ります。
エクシレル®SEの有効成分シアントラニリプロール(通称:サイアジピル®)は、世界で2番目のアントラニリックジアミド系殺虫成分です。
2014年10月に農薬登録されてから2020年現在、サイアジピル®を含む殺虫剤は、60か国以上において、多くの生産者様の作物栽培に貢献しています。
サイアジピル®は、幅広い殺虫スペクトラム、速やかな食害停止効果、優れた残効性により、害虫の密度を長期間抑え、作物を保護する特長を有しています。
エクシレル®SEは、チョウ目害虫、ハエ目害虫に対するジアミド系殺虫剤特有の優れた効果に加え、吸汁性害虫(アザミウマ類、アブラムシ類等)にも卓越した効果を示します。
また、害虫への効果発現が速いため食害を速やかに停止し、配偶行動阻害も含め、成虫期の害虫に対しても高い効果を発揮します。
一方で土着天敵、ミツバチ、魚類等の環境・有用生物に対して影響の小さい有効成分です。
これらのことから、効果的な害虫密度の低下、作物の保護を実現し、高品質・高収量に貢献します。
5つの優れた特長
1. 幅広い殺虫スペクトラム
チョウ目、ハエ目、コウチュウ目、カメムシ目、アザミウマ目等の広範囲な害虫に卓効を示します。
2. 速やかな摂食行動阻害による作物保護
害虫が有効成分を取り込むことで、速やかに食害を停止させます。
3. 優れた浸透性、移行性並びに耐雨性
葉面浸透性と局所的な移行性を持つので害虫が食害しようとする部位まで有効成分が到達し、効果的な防除ができます。また、この効果により優れた耐雨性を示します。
4. 害虫の繁殖期を含む各ステージに対する効果
幼虫に対する高い活性に加え、成虫に対しても殺成虫、繁殖行動阻害、産卵抑制等の効果を有し、次世代の害虫密度を低下させることで効率的に作物を保護します。
5. 適用作物や環境に対する高い安全性
適用作物への安全性が高く、魚類やミツバチ、土着天敵に対する影響が小さいため、使用時期や場所の制限が少なく、IPMにも適しています。
殺虫スペクトラム
チョウ目、ハエ目、コウチュウ目、カメムシ目、
アザミウマ目等の広範囲な害虫に卓効を示します。
サイアジピル®として確認されている殺虫スペクトラムは下記の通りです。
作用特性
害虫の筋肉に作用して速やかに活動を停止させます。
筋肉細胞の筋小胞体は細胞内のカルシウムイオン濃度を調整することにより筋肉の収縮・弛緩をコントロールしています。
サイアジピル®は筋小胞体のリアノジン受容体(RyR)に結合して筋小胞体内のカルシウムイオンを細胞内に放出させます。
その結果、昆虫は筋収縮を起こして速やかに活動を停止し、死亡します。
また、昆虫のリアノジン受容体に選択的に作用し、ヒトの受容体に反応しないことがヒトへの安全性が非常に高い理由です。
●サイアジピル®作用機構
サイアジピル®は昆虫の筋肉に作用して昆虫の行動を停止させます。
取り込み経路/効果発現速度
経口摂取により高い効果を発揮します。
●経口活性と経皮活性での比較(茶/チャノコカクモンハマキ)
【試験概要】
- 供試害虫:
- チャノコカクモンハマキ
- 系 統:
- 静岡県焼津市採取系統
- 試験齢期:
- 2齢幼虫
- 浸漬時間:
- 5秒間
- 展 着 剤:
- 非イオン系 3000倍
- 連 制:
- 1区7頭2反復
- 調 査:
- 処理6日後
- 考 察:
- チャノコカクモンハマキに対しては経皮活性より経口活性が高い。
効果発現が速いため、速やかに食害を停止します。
●経口活性における作用速度(茶/チャハマキ)
2013年 日産化学工業(株)(現:日産化学(株))生物科学研究所
【試験概要】
- 供試害虫:
- チャハマキ
- 系 統:
- 日産化学累代飼育系統
- 試験齢期:
- 3齢幼虫
- 連 制:
- 5頭4反復
- 試験方法:
- 薬液でディッピングした茶葉を風乾。風乾後、12号コルクボーラーでくり貫いた。チャハマキ3齢幼虫を5頭ずつ放虫しておいた3cmシャーレに2枚ずつ入れ、1時間おきに苦悶症状の有無を調査。
- 考 察:
- エクシレル®SEは対照薬剤よりも速い効果発現を示した。
葉面浸透性/耐雨性
葉面浸透性に優れるため、潜葉する害虫、また葉裏の害虫も防除できます。
●かんきつ/ミカンハモグリガに対する効果
2008年 愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター
【試験概要】
- 対象作物:
- かんきつ(南柑20号)
- 発生程度:
- 中発生
- 区 制:
- 1区1樹 5反復
- 処 理 日:
- 8月1日、11日、21日
- 調 査 日:
- 9月2日(最終散布12日後)
- 処理方法:
- エクシレル®SE 5000倍、対照M剤 4000倍
- 調査方法:
- 各区より、7葉以上ある10新梢の全葉について調査。
- 考 察:
- 本剤は、対照薬剤に優る防除効果が認められ、無散布と比較して高い防除効果が認められ、実用性は高いと考えられる。薬害は認められなかった。
高い耐雨性を示します。
●茶/チャノコカクモンハマキに対する効果
対照薬剤の防除価が降雨によって低下するのに対し、エクシレル®SEは降雨の有無に関わらず高い防除価で推移した。
2014年 大塚アグリテクノ(株)(現OATアグリオ)
【試験概要】◎対象作物:茶(やぶきた)◎区制:1区3ポット 2連制 ◎処理日:3月3日 ◎処理方法:供試薬剤を動力噴霧器(30気圧)で十分量散布し、翌日に人工降雨装置で40mm/hを1時間降雨処理した。◎調査日:散布1日後、7日後、14日後
●かんきつ/ゴマダラカミキリに対する効果
散布翌日に降雨処理を行った結果、対照薬剤と比較して優る効果を示した。
2018年 愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター
【試験概要】◎品種:南柑20号 ◎区制:1区1樹 1連制 ◎処理日:6月12日 ◎処理方法:所定濃度を背負式動力噴霧器で散布 ◎降雨処理:処理翌日、放虫当日に人工降雨装置を使い25mm/hを50mmになるよう降らせた。 ◎調査方法:放虫7日後に供試虫の生存、死亡、苦悶別に計数
害虫の様々なステージに対する作用
果樹の殺成虫、配偶行動阻害、殺孵化幼虫、食入防止など多様な効果で被害を抑制。
●配偶行動阻害とは
配偶行動阻害とは害虫の成虫の繁殖行動、すなわち交尾相手の探索行動や交尾行為、産卵行為などを妨げることです。サイアジピル®には高い配偶行動阻害効果が認められます。本剤に暴露した成虫は正常な行動ができなくなり、交尾機会の損失や産卵行動異常に伴い産卵数の減少が認められます。また本剤の直接の殺卵効果は害虫種によっては高くありませんが、卵に薬剤が付着すると孵化時に幼虫が卵に付着した薬剤を取り込むことにより死亡します(殺孵化幼虫効果)。その結果、次世代幼虫が減少し、短期的な被害防止のみならず長期的に害虫個体群の密度を減少させると考えられます。
エクシレル®SEは害虫の各ステージに作用することが判っています。上図はモモシンクイガの例ですが、成虫に対しては直接的殺虫効果と産卵抑制及び配偶行動阻害、卵に対しては孵化直後の殺虫効果、幼虫に対しては殺虫効果と食入阻害効果が確認されています。
●交尾阻害、産卵抑制効果(モモシンクイガ)
りんご幼果への産卵数を減少させます。
- 所定濃度の薬液をシャーレに散布し風乾 (300R/10a相当量)
- 無処理のりんご幼果を試験ケージ内に設置
- 未交尾の♀と♂を別々シャーレ内に放虫
- 放虫5日後に産卵数を調査
- 24時間後に♀=5頭,♂=5頭を試験ケージ内に放虫 (2連制)
●殺孵化幼虫活性(モモシンクイガ)
2013年 日産化学工業(株)(現:日産化学(株))生物科学研究所
有効成分の活性の高さ、優れた浸透性により、孵化幼虫に対しても高い防除効果を示します。
※調査は処理10日後
●様々なステージに対する作用を活用した防除事例(スモモヒメシンクイ/モモシンクイガ)
スモモヒメシンクイ(幼虫)に対する速やかな摂食行動阻害、成虫に対する産卵抑制効果により、高い食入防止効果を示します。
散布後経時的な産卵数への影響
散布後経時的な食入率の推移
2014年 総合防除コンサル株式会社
【試験概要】
- 品 種:
- アルプス乙女(4年生)
- 区 制:
- 1区1樹2反復
(各樹を2.5m×2.5m×2.5mの網室で覆った) - 処 理 日:
- 8月30日
- 処理方法:
- 果実が十分ぬれるように、2.5ℓ/区程度散布
- 放 虫 日:
- 散布当日,10,20日後に未交尾の雌雄20対を網室内に放虫
- 調査方法:
- 放虫10日後に着果している全果実を回収(最低50果以上)し、25℃室内に7~8日置いた後、実態顕微鏡下で調査(産卵数、食入痕数)
- 接種した害虫の履歴:
- 2011年9月に福島市内リンゴ園から採集し、累代飼育している個体群
モモシンクイガに対し、対照薬剤に優る産卵抑制効果、食入防止効果を示します。
果実回収時(散布20~23日後)までの累積産卵数
果実回収時(散布20~23日後)の食入被害状況
2015年 総合防除コンサル株式会社
【試験概要】
- 対象害虫:
- モモシンクイガ
- 品 種:
- アルプス乙女(5年生)
- 区 制:
- 1区1樹3反復
(各樹を2.5m×2.5m×2.5mの網室で覆った) - 処 理 日:
- 7月4日
- 処理方法:
- 果実が十分ぬれるように、2.5ℓ/区程度散布
- 放 虫 日:
- 散布1,3,5,7日後に既交尾の雌4~6対を網室内に放虫
- 果実回収時の産卵・食入調査:
- 7月24日~27日
- 調査方法:
- 100果/樹について、産卵数、食入痕数を実態顕微鏡下で調査
- 接種した害虫の履歴:
- 2007年5月に福島県果樹研究所から採集し、累代飼育している個体群
成虫発生時に散布することで次世代の幼虫の発生を抑えて高い防除効果を発揮。
(茶の事例)
●成虫期防除事例
エクシレル®SEは、発蛾最盛期の散布を行うことで、成虫の正常な交尾や産卵を抑制し、次世代の幼虫の発生を低く抑えることができるため、加害を未然に防ぐ効果が期待できます。例えば、チャノコカクモンハマキの効果的な防除に活用されています。
●交尾阻害、産卵抑制効果
成虫の交尾・産卵を強く抑制します。
チャノコカクモンハマキに対する効果
● 結果は大卵塊がまったく産卵されず、産卵抑制効果が確認できた。(表1、図1)また、小卵塊においても、幼虫がふ化しなかった。
*:卵塊の大きさ:小=長幅5mm未満 大=長幅5mm以上
試験担当部署:静岡県茶業研究センター
試験方法(ドライフィルム法+チャ葉浸漬法):所定濃度の薬液をプラスチックカップに散布し風乾した。その容器にチャ葉浸漬法により準備した処理葉6枚を投入し、未交尾の雌雄成虫を2対放飼した。1,3,7,10日後に卵塊の大きさと数を調査した。
(参考)チャノコカクモンハマキの雌成虫は、自然界では、茶葉の裏側に産卵する。
この試験では、茶葉の葉裏に当たる容器のふたの内側に卵塊を産み付けている。
チャハマキに対する効果
● 未交尾雌雄とエクシレル®SE処理葉を同一容器に48時間投入することで、交尾率、産卵数が抑制された。
2016年 鹿児島県農業開発総合センター茶業部
【試験概要】
- 対象作物:
- 茶
- 対象害虫:
- チャハマキ(南九州市知覧町永里で採集)
- 区 制:
- 1区1樹 1連制
- 処 理 日:
- 9月9日
- 処理方法:
- 2000倍の薬液を露地茶園に乗用型防除機で200ℓ/10a相当量散布した。散布当日に古葉を採集し、1容器あたり処理葉5枚とともに未交尾雌雄2ペアをプラスチック製容器に投入した。処理48時間後に処理葉を無処理葉と入れ替えた。処理1, 3, 5, 7, 10日後に生存状況、産下した卵塊数を調査し、卵塊回収後ふ化状況を調査した。
- 播種した害虫の履歴:
- 2015年3月に南九州市知覧町永里で採集したチャハマキを累代飼育。
●産卵抑制
既交尾雌に対しても作用し、産卵を抑制します。
2015年 鹿児島県農業開発総合センター茶業部
【試験概要】
- 対象作物:
- 茶
- 区 制:
- 1頭/容器 計20頭/区
- 処理方法:
- 2000倍の薬液をハンドスプレーでプラスチック製容器とその蓋に20mg/cm2噴霧し、乾燥させた。また、前述の薬液に10秒間浸漬し、風乾した茶葉5枚を容器に入れた。既交尾雌を容器に入れ、10日後に卵塊数を調査し、卵塊回収後ふ化状況を調査した。
- 考 察:
- エクシレル®SEをチャハマキの既交尾雌に継続処理した場合、直接的な殺虫効果と産卵抑制効果が示唆された。
- 播種した害虫の履歴:
- 2015年3月に南九州市知覧町永里で採集したチャハマキを累代飼育。
●配偶行動への影響 – 放虫前散布、放虫後散布の比較
放虫前、放虫後のいずれの散布でも効果を発揮します。
2015年 福岡県農林業総合試験場 八女分場
【試験概要】
- 対象作物:
- 茶
- 対照害虫:
- チャノコカクモンハマキ
- 区 制:
- 2.5m×1.8mを防虫ネット被覆 1反復
- 処理方法:
- 2000倍に希釈したエクシレル®SEを200ℓ/10a相当量散布した。
- 処 理 日:
- 4月24日~26日
- 放 虫:
- 4月24日~26日の薬液乾燥後(放虫前散布)又は散布1時間前(放虫後散布)に成虫50頭(雄30頭、雌20頭)をネット内に放飼)
- 調 査 日:
- 5月21日
- 調査方法:
- 巻葉数と幼虫数を調査した。
●圃場におけるチャノコカクモンハマキの成虫期防除
エクシレル®SEは、配偶行動阻害による密度低下、速やかな食害停止で作物を守ります。
● チャノコカクモンハマキ成虫に対し圃場における防除試験を行った。
● 結果は、成虫期(発蛾最盛日2日後)防除で高い効果を示した。(表2)
試験担当部署:静岡県茶業研究センター
試験実施場所:静岡県牧之原市布引原
【試験概要】
- 区制・面積:
- Ⅰ区504㎡、1区制、ⅡおよびⅢ区50.4㎡、Ⅳ区25.2㎡、3区制
- チャノコカクモンハマキの発生状況:
- 少から中発生
- 発蛾最盛日:
- 2016年8月2日
- 薬 剤 散 布:
- 成虫期防除区は、2016年8月4日(発蛾最盛日2日後)に、慣行防除区は2016年8月12日(発蛾最盛日10日後)に400ℓ/10a相当を動力噴霧機で散布。
- 調 査 方 法:
- 2016年8月25日に各区の生存幼虫数を50cmX50cmの枠を用いて、Ⅰ区は枠200箇所(計50㎡)、Ⅱ区とⅢ区は枠20箇所(5㎡)、Ⅳ区は、枠10箇所(2.5㎡)を任意に調査。
有用昆虫への影響
有用昆虫にやさしい殺虫剤です。
温州みかんにおける下記の試験結果から、エクシレル®SE100倍液散布はミツバチの活動と群の増殖に対して影響を及ぼさないと考えられます。
ミツバチ残毒1日影響試験(100倍液試験)
2016年 株式会社アグリクリニック研究所
【試験概要】
- 品 種:
- 宮川早生 石地フリー
- 試 験 動 物:
- セイヨウミツバチ(1巣箱に4枚群、約4,000頭)
- 試 験 規 模:
- 50ℓ鉢に植栽した温州ミカン(3~4年生)を7株設置
- 処 理 日:
- 6月8日
- 処 理 方 法:
- 圧力式噴霧器を用いて、所定濃度の希釈液を茎葉が十分濡れるように、1樹当たり100㎖散布
- 試験動物の管理:
- 供試ミツバチは、散布 30日前に購入し露地に置き、試験前日に巣箱を設置、自由に訪樹できるようにした。
- 調 査 方 法:
- 散布3、7、14,21日後のミツバチ群に対する影響を調査した。
品種別薬害試験結果
*対照薬剤の表記:アルファベット順不同